大脳の回路が小脳にコピーされる
脳が年齢に関係なく使えば使うほどニューロンのネットワークが増加し、強化されていくことはこれまでに説明しました。
脳のオプティマイズは獲得したい思考や行動を意識しなくてもできてしまう状態にすることです。
最近の研究でこの働きには小脳が関わっていることがわかってきました。
例えば
自動車の運転について考えてみると、
- 免許を取ったばかりの頃は車線をはみ出していないか?
- カーブのとき脱輪してしまわないか?
といったチェック事項を意識してしなくてはなりません。
しかし、繰り返し運転することでこうした一連のチェック事項を意識せず運転がスイスイできるようになっていきます。
そして、一度できるようになって仕舞えば、多少のブランクがあっても問題なく運転できてしまいます。
このことを心理学的に言えば「潜在意識に入った」といいますが、脳科学的に言えば、大脳の記憶が小脳にコピーされた(体に覚えこませた)からだと考えられるのです。
必要な時間は2200時間
同じ作業を繰り返し繰り返し行うことで大脳の記憶が小脳にコピーされるのですが、そのためには約2200時間が必要だといわれています。
つまり、サッカーのドリブルが上手になりたいと思うなら2200時間繰り返せば(毎日1日2時間で3年)ドリブルのやり方が大脳から小脳にコピーされて意識しなくてもできるようになってしまうということです。
練習を始めたばかりの頃は大脳の中に「ドリブルをする」という回路を作らなければならないのでよほど楽しくなければ心理的負担が大きく途中でやめてしまいたくなりますが、すこし頑張れば大脳の中に「ドリブルをする」という回路ができてしまうので、心理的負担は軽くなってきます。
ただし、この頃は脳の中にできた「ドリブルをする」という回路は細く弱いため、練習をサボるとすぐに回路の中を電流が流れなくなって「できた」ことが「できなく」なってしまいます。
しかし、コツコツ練習を続けることで「ドリブルをする」という回路が徐々に太く、安定したものになっていきます。
こうなるとドリブルがスムーズにできるようになって、軽快なドリブルで相手選手をすり抜けていくのが楽しくなっているでしょう。
そして、ドリブルの練習を始めて2200時間たつと大脳にできた「ドリブルをする」という回路が小脳にコピーされて「ドリブルをする」という回路が完成します。
そうなると、もう何も考えなくても体が状況に反応し様々な状況に体が勝手に対応できるようになっているはずです。
小脳にコピーされた回路は多少のことでは弱化しないので、多少ブランクが空いても少し練習をすれば以前のようなレベルでドリブルを行うことができるようになっていきます。
ただし、加齢による筋力、反射速度などの機能の低下はこの回路だけでは補えませんので、ブランクが開けば開くほど、加齢が進めば進むほどドリブルのレベルは落ちていくのです。
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